投稿されてきた短歌 感想文

帰り道 ふと思いつく 短歌だよ 夜学に通う 自分が浮かぶ   山本隆裕 15才

 

初めての 仕事はスーパー 野菜の品出し 綺麗に並べ さあいらっしゃい  大山誉人師 16才

 

たまねぎと マンゴートマト 選別し 箱詰め終えて 夜学へ通う  渡辺良人 16才

 

まっすぐに 自分の気持ち 伝えたら だめの一言 もうすぐ冬だ  嗣弘 27才

 

スタンドは 油臭いし 手も汚れ お洒落も我慢し 給油続ける  さおり(神戸市)

 

ほんとうに 僕でいいのと 確かめて 買ってくれたね 記念の指輪  さやか

 

鉄工所 NC旋盤 見習いで 雑用ばっか いつもぐだぐだ  木下雄一 17才

 

定時制  家族の様な  楽しい仲間  卒業しても  今も変わらず    類  33歳(10月4日)

 

ほりだされ 得る物全て マイナスで なぜ私は ココにいるのだろう    ゆい 17才(10月11日)

 

通院と 自宅療養 辛い日々 でも来た幸せ 二度目の花嫁  類 33歳(11月1日)

 

夜勤帯 配薬巡回 オムツ替え 一服つかの間 またナースコール   

                           介護士 男 26才 大阪 (11月29日)

 
母校へと 感謝の手紙 後輩へ 愛する願い 心を込めて

                           松山 茂 男 23才 神戸(1月27日)

 

定時制 健診すれど うわの空 むべなるかなと 今こそ思う

                            歯科医師 兵庫県 (2月14日)

 

 

定時制 あの日の青春 なつかしむ 今は5人の 大黒柱

時が経ち 夜学の良さを しみじみと 語るわが子に 自分を写す 

                         松下重洋(卒業生) 36才 大阪市 

                                       (2月24日)

 

私の声 漸く聞こえ 怖くなる ギュット膝に いき吹きかける

                         よんたん 23才 兵庫(2月25日)

 

統失の こんなオレでも 短歌集 涙が出るオレ 死んではいない

統失の オレに生きる 力をば 与えてくれる この短歌集

統失の オレ仲間が 欲しいけど きっと差別される だから友達一人もいない

                           年齢 所在不詳(3月2日)

                               *統失・・・統合失調症 

 

君たちの 生きる強さに  感無量 本に向かいて 拍手する我

親と言う  看板下げたい 時もある  未熟な自分 逃げ場の無い空

出来ぬこと 数え始めたら キリがない ママと呼ばれる だけでシアワセ

                                                       仙台市 今年45歳(3月9日)

 

飾り枠 千枚巻いて 夜学行く ねむくてだるい でも頑張るぞ

                                                       田崎勇次 卒業生(3月10日)

 

 

この本は 教えてくれた 生きること つらいと思う 人もいること  小山晴江 14才 兵庫

  

不登校 わからなかった 私に 南先生が 教えてくれた   小山晴江 14才 兵庫

   

 
ジヘイショウ そんなことばで くくられる 閉じてないのに なんでやろ
                                                        多加貝 健太   神戸市須磨区在住

 

 

夏の夜の床で読みたる一冊の本が励ます私の一生

 

                                                         H・K  22歳       石川県在住(2011.6)

 

青春の 夜学が恋し 反射窓 今は妻子と 風呂上がりの窓

                         日野雄司 30歳 神戸市(2011.9)


秋隣り 学びとは何か 語り合う まだまだ僕らは 進化途中

                       M・T(男) 大学4年生 神戸市(2015.9)

*身体に障がいがあり車いすで大学に学ぶ学生である。卒業後の進路に不安や葛藤を抱えながらも前向きに生きようとする強い意志が感じられる。

 

 

 

 

 

読者からの感想文

南先生へ

 

短歌を通して、夜間高校に通う子の生きる事への難しさや弱さ、強さも見られて色々と考えさせられました。先生もこれだけの事情を抱えた生徒を支えてこられた事に本当に頭が下がります。

…というのは親の目線からですが、かくいう私も大変問題児でしたのでどちらかというと生徒の気持ちの方が手に取るようにわかり、複雑な心境でした。

 

いくつか印象に残った中で、嬉しい気持ちになったのは不登校のめぐみちゃんへの手紙でした。書いた男の子の優しさと熱い気持ちが心に響きました。何度読んでも勇気づけられるいい手紙だと思いました。私も不登校でしたが、他の人の為にあんなに温かい手紙は書けなかったと思います。

52歳の女性と60歳の男性の何歳になっても学ぼうとする気持ちも素晴らしく勇気づけられました。

悲しい気持ちになったのは麻理さんの短歌でしょうか。読んだ時の衝撃が強く、読み進めると嫌な予感がやはり…。不安定な彼女の気持ちが伝わってきて、何とか踏みとどまる方に向いていって欲しかったと思いました。

あと目にとまった文章が、短歌を作りたくない理由が暗い自分の過去を見る事がいやだったという文章でした。私も同じで自分の過去を振り返るのが嫌でずっと避けてきたからです。過去を思い出すと何かに押しつぶされそうになるので、いつも考えないように生きてきました。

結婚して子を持ち、ようやくこの歳になって少しずつ向き合えるようになってきました。

私は中学は1年ほどしか通っていません。

父はおらず母はギャンブル依存でネグレクト。

ドラマみたいな話だとか、よく犯罪に手を染めずに生きてきたねと言われた事もありました。南先生のおっしゃるとおり、事実は小説よりも奇なりを身をもって体験しております。しかし、あまり不幸話ばかりしても仕方がないので、私は明るい未来を考えて生きていきたいと思っています。

複雑な家庭環境で生まれた子どもは自分の力ではどうにもできない事があります。

私は高卒の資格が欲しくても学校に通う事ができなかったので、大検を取得する道を選びましたが、夜間高校や通信制高校を必要とする人もいます。どのような境遇の人にも学べる環境と居場所である学校があり続けて欲しいと思います。

 

勇気づけられる良い本でした、ありがとうございました。

 

神戸市 女性 F・Mさん 35才